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留学中のリーディング・スキル(1)

 大学院レベルでは、学部レベルよりもはるかに多くの本を読む必要があり、読む内容もより深く、より広い範囲に及ぶため、効果的なリーディングスキルを身につける必要があります。時間に制約があるため、闇雲に読んでいては効率的ではありません。まずは、読書から何を得たいかを考えることから始めましょう。例えば、(1)新しい概念を学ぶため(2)既知の概念を広い文脈で捉えるため(3)プレゼン資料の材料探しのため(4)自分の主張を支える根拠、あるいは矛盾することになる事例探しのため、などなど様々です。目標が定まったら、課題図書をまるごと一冊読む必要は全くありません。目次を見て、得たい情報がありそうな箇所を探し、さらっと目を通します。最初は知らない専門用語がたくさん出てきますよね。何度も同じ用語が出てきて、議論の中心であると感じたら、曖昧なままにせずに時間をかけてネット検索したり、用語集を探ってみたりして、意味をしっかりと頭に入れます。ここの基礎の部分で時間をかけることで、曖昧にしてしまった人の何倍も速いペースで議論を理解できるようになります。時間をかける部分と時間をかけるべきではない部分を明確に判断できるようになると読書効果が倍増するので、そこを意識してみましょう。

左側が論文/右側がノート

読書中に時間をかける必要のあるケース:(1)議論の中心となっている概念の理解(2)チュートリアル課題(問題)に対する回答となりうべき箇所(3)論文・エッセイ執筆の際に引用する箇所

 読書をしながら、自問自答をすることも重要です。今週の課題読書の著者と自分は同じ考えを共有しているか、なぜ共有できるのか、共有できないとしたら、どこが自分の考えと異なるのか。授業中に課題問題が与えられている場合は、読書から回答が得られるか、自分の主張を形成するのに役立つ情報はあるか意識しながら読み進めます。
 自分の立場を裏付ける資料を求めて文献を読み漁るのは良い考えとは言えません。都合のいい資料ばかりの集まりになってしまいます。説得力のある回答をするためには、持論への反論を認め、論理的に反論する必要があります。 自分の主張と矛盾するような資料、類似する資料、両方必ず読んでください。また、同じ課題について複数冊読むと、それぞれが互いにどのように関連しているか意識してみましょう。そうすることで、特定の問題に対するさまざまな立場と、その根拠を明確に把握することができます。
 もうひとつ意外と忘れられがちなのですが、著者の存在です。著者はどういうバックグラウンドを持っている人物なのか。執筆された時期はいつで、その時期の背景は何か、など知った上で読むと著者の言っていることの信憑性や考え方の癖などを踏まえて読むことができるようになります。例えば、著者は「〇〇のバックグラウンドを持っている学者だから、☓☓と主張しているのかもしれない」「□□の視点を持っている人物であれば、このような考えには至らなかった」といった分析をすることも可能です。

 それでは、リーディング・リストですが、授業前に必ず読まなければならない必須図書の他に、読むことを推奨される本のリストもあります。必須読書は読んでいないと授業の議論についていけない、授業を受けていても身にならないので意味がないレベルです。他方、推奨される読書については、余裕があれば流し読みをする程度でいいと思います。リストをもらった段階で課題図書の題名、あらすじを読んでトピックとの関連性をチェックしましょう。自分の関心事項とマッチしていたら推奨本も読むといいでしょう。時間に限りがあることを忘れないでください。
 論文等を読む前にネット検索で要約記事や「あらすじ」を読むのはズルいか?ズルくありません。限られた時間で大量の文章を読むことになるので要約記事を予め読んで読みると難解な論文もスラッと読めることがあります。もちろん、要点がまとめられていない「下手」な要約もたくさんネット上に転がっていますので、そこは自己責任となってしまいますが、多くの学生はまずは大枠のあらすじから入り、関心のある箇所を詳細に読み込むというスタイルが多い気がします。私が留学中によく使っていた裏技は、論文名を検索して「レビュー論文」を漁ることです。レビュー論文では、あるテーマに関し既に発表されている論文概要や評価が網羅的にまとめられており、何が注目されていて何が見落とされているのかが大体分かります。レビュー文献に載っている文献がリーディング・リストの大半を占めることもよくあります。全部ゼロから自分でやろうとすると膨大な時間と労力がかかります。先人の知恵を拝借しつつ、何か学術的な価値を米一粒でも加えられないか考えることに脳みそをひねるのも重要です。とにかく課題をこなすのは、がむしゃらにではなく、賢くこなしていきましょう。

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サイト運営者

大人になってから「学ぶ」ことに目覚めた和(なごみ)です。イギリスが大好きで、国内大学院では英国研究を専攻。オックスフォード大学院では開発学部のGlobal Governance & Diplomacy(GGD)コースで修士号取得。英国留学をしてみたい方を心から応援するためのブログを開始いたしました。
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留学経験:オックスフォード大学院 (リンカーン・カレッジ)
趣味:サーフィン、イギリス 映画(007、ダウントン・アビー)

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