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オックスフォード物語 第4話 憧れのハイ・テーブルで食事

 少し、学生生活に慣れてきたところで、リンカーン・カレッジから新入生宛にフォーマル・ホールFormal Hall)の招待状が届きました。カレッジ長(Rector)主催の夕食です。第2話でもご紹介させていただいたように、リンカーン・カレッジの食堂は、まさにホグワーツのGreat Hallと同じようなレイアウトで長い机が3列並び、食堂の奥の高台には、教授・フェローのためのひな壇、ハイ・テーブルHigh Table)があります。このレイアウトは、学生の上に教授やフェローがいるというヒエラルキーを示す、古い伝統の名残です。
 フォーマルな服装でワクワクしながら、食堂に入り、予め伝えられていた席次どおりに着席します。私は運良くハイ・テーブルでした。同様の専門分野の学生・教授・フェローが近くに座れるよう考慮した席次だったのですが、たまたま、政治・外交分野を専門にする学生はハイ・テーブルでした。大学の招待があれば、大学院生、卒業生は年に1回ハイテーブルに座って食事をすることができます。また、大学やカレッジの招待でゲストとしてハイ・テーブルで食事することも可能です。

 全員揃い、教授とフェローがガウンを身にまとって厳かな雰囲気で食堂に入り、着席すると、カレッジ長がいきなり、裁判官が叩く木槌のようなものをガツン!と鳴らし、その音を合図に全員起立します。ラテン語でお祈りが捧げられ、それから料理と飲み物がサーブされます。バトラーが飲み物を注いでくれ、またマナーの悪い学生はバトラーからお叱りを受けます。バトラーは大変誇りのある仕事で、プライドを持って仕事をされている方がほとんどです。
 ハイ・テーブルでの食事の居心地はというと、正直落ち着かないです。食事している姿を四方八方から見られているような気がして、ソワソワしてしまいました。私の近くにカレッジ長が座っていましたので、質問攻めにあい、食事どころではなかったのもいい思い出です。教授・フェローの皆様は大変フレンドリーで、緊張している学生にも、みんな最初は緊張するけど、すぐ慣れるわよ!と言っていました。

 食事が終わると、またガツン!と木槌を学長が叩きます。ものすごく音が大きいので、どんなにうるさくても一瞬でホールが静まります。ダンブルドア教授の一声のような感じです。再び、ラテン語でお祈りが捧げられ、ハイ・テーブルの教授・フェローが食堂から立ち去るのを学生は静かに見届けます。学生は緊張が溶け、自由タイム。各々、大学院生用の談話室(MCR)に移動し、ワインを思う存分飲んだり、スナックを食べたりしました。カレッジの遊び心だと思いますが、怪しい石像が牢屋のようなところに閉じ込められています。リンカーン名物ですので、カレッジの中に入る機会がありましたら、探してみて下さい。

 最初のフォーマル・ディナーの紹介でした、この後にオックスフォード在籍期間中に4回ほどフォーマル・ディナーに出席しましたが、ハイテーブルに座ったのはコレが最初の最後です。一生忘れられない経験でした。

第5話では、大学院コースの紹介をします。

目次

オックスフォード用語

Formal Hall: 大学で行われる伝統的な食事。カレッジによっては、フォーマルな服装あるいはガウンを着用することが必須。また、大学外からゲストを招くことも可能。

High Table: 大学の食堂にあるひな壇の席。カレッジ長(Rector)とフェローが食事をする場所。ゲストがハイテーブルに招かれることもある。

Rector:リンカーン・カレッジとエクセター・カレッジの学長のことを指す。

MCR (Middle Common Room) : 大学院生のための自治組織であり、社交の場でもある。また、MCRは大学院生用の談話室という意味でも使われる。

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サイト運営者

大人になってから「学ぶ」ことに目覚めた和(なごみ)です。イギリスが大好きで、国内大学院では英国研究を専攻。オックスフォード大学院では開発学部のGlobal Governance & Diplomacy(GGD)コースで修士号取得。英国留学をしてみたい方を心から応援するためのブログを開始いたしました。
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留学経験:オックスフォード大学院 (リンカーン・カレッジ)
趣味:サーフィン、イギリス 映画(007、ダウントン・アビー)

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